聞けば、きっかけは父に頼まれた仕事で隣の県に行った時だったという。
その時あたしは別件で立て込んでいた時だったので、仕方なく一人で行ったら出逢ったらしい。
「それでねっ、少しずつLINEとか電話とかしだして…。
最初は全然返事もせず警戒してたんだけど…話してく内に楽しくなって…。
たまぁにね、会いに行ったりしてたの。」
真っ赤になりながら、それでも嬉しそうに話すハルに、あたしも笑顔で相槌を打つ。
ほんの少しの予感。
なんとなく、彼女の“中心”があたしからその彼へと変わる気がした。
別にそれでも構わないと思った。
生まれてからずっとそれを手にしていたのだし、確かに少し悲しいけれどハルが幸せならいいと思えた。
それに何より、ハルがあたしと離れるわけがないと信じて疑わなかったから。
数日後、彼女はその彼とデートに行った。
あたしは穏やかな気持ちで送り出せた。
なんの狂いもないように細心の注意を払っていつも通りを装っていたのだ。
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「もー、ルナは意地はりすぎぃ。」
よく連んでる仲間の一人がむくれた顔でそう言った。
「何がー?」
「今日のなんて、相手多いんだよ?
ハルいた方が楽じゃんっ‼︎」
「別に意地なんかはってないよ。
第一、今日はハルデートなんだよ?
昨日から何着てこうとかめっちゃ悩んでてさぁ。
…っもう!ほんと可愛い!」
「あー、はいはい。
聞いたあっしが馬鹿でしたー。」
「ルナはハルについて語らせると煩いからね。」
「ったく、うぜぇよなぁ。」
「うざいとは何事じゃあ‼︎」
いつも通りの会話で時間を潰していれば、すぐに奴らは来た。
「っ、総長‼︎
来ました‼︎‼︎
予定より多いです‼︎」
焦りの表情が見えてる後輩を落ち着かせるように微笑んで、頭を撫でた。
「だーいじょーぶ。
落ち着け。」
そう言うが早いか、部屋で寛いでいた奴らもこぞって飛び出して行く。
その瞳はギラギラと滾っていて、正直少し呆れた。
怒号や喧騒で溢れる人の塊に飛び込んで行き、その身を武器にして道を開いていく。
なんて高揚感。
思わず口角が上がってしまうのは許してほしい。
あたしの仲間は強くて、30分もすれば床には敵の屍が転がった。
敵もナイフやらの凶器を持っていたので、こちらも同様に手に凶器を携え、さらに狩っていく。