「ありがとう
あのさ、ついでにメアド交換しない?」


「いいよー!!
じゃあ赤外線でいい?」


「俺、今時なのに赤外線分かんないんだ
だから…里中がやってくれない?」


「分かった
そしたら携帯貸して!」


「おう」


私が佐藤くんにスマホを受け取ろうとしたら、スマホを落としそうになった佐藤くんがいた。

私が咄嗟に手を出すと、同じように手を出した佐藤くんがいて………


思わずお互い手が触れて"あっ"と目を見つめながら驚く。


「ごめん」


「気にしなくていいよ!
ちょっとびっくりしたけど…」



全開している窓から風が入り込み、ほんのり汗の匂いが鼻に香った。

それはくさいとかじゃなくて、新鮮で青春の香り。


小さな物置のすぐ側がグラウンド。

体育の授業をしている生徒が、ホイッスルの音とともに走り出した。


それと同時に額に汗がほんの少し滴る私。



生徒の声にかき消されたけど、確かに佐藤くんが何か言ったように聞こえた。





夏が近づくとともに、だんだん暑さも一緒にやってくる今6月。



恋人がいたら一緒に花火大会行ったり、お祭りで沢山食べて金魚掬いとかしたかったなぁ。



って、何で私が今こんな余韻に浸ってるの?




私は突然我に返るとともに言葉を失う。