沖田さん……?


「秋羽に嫌われたのかと思ってた。嬉しいな」


今までに見たことのないくらい、くしゃりとした笑顔に、もっと見たいという気持ちで、顔をそらしてしまった。


なぜ、胸が熱いのだ。


「違います。沖田さんのために特訓してたんです」


これぐらいで、沖田さんが納得してないことはわかっているのだ。


それでも、沖田さんが笑顔で立ち上がってくれたのだから、私も気にしていないふりをしなくてはいけない。


本当にいろいろ、ごめんなさい。


「手加減しようと思ったけど、イラついたからやーめたっ!ボコボコにしてやるから、覚悟してね」


沖田さんの黒い笑みでさえ、今の私には闘争心を燃やさせる。


私こそ、沖田さんに勝ってやるのだ。


「絶対に負けないのだ!」


そして私は、沖田さんから一本も取ることなく、負けた。


だがその日、私は今までで一番沖田さんと対等に試合ができたのだった。


また一歩、強くなる。