『綾へ 鈴木修』


封筒の真ん中に

きれいな字で

そう書かれている。


「修君……。
あれから5年と少し。」


綾の母親は

封筒を眺めながら、

小さくつぶやいた。


「綾は元気にやれてるわ。
時々、遠い目をしてるけど…」


綾の母親は、

ちょうど5年たった頃から

ずっと考えていた。


この封筒を、

綾に渡すか、

渡さないか。


修君は

どう望んでいるのだろう…?


渡してほしいと

思っているのか…


渡さない方がいいと

思っているのか…。


それから、

また考えていた。