綾は俺が差し出した指輪を

手のひらの上にのせた。


そして俺は真剣な表情で

綾の方を見つめて言った。


「もし俺のことを許してくれるなら、
もしもう一度俺に
同じ誓いをさせてくれるなら、
俺にもう一度指輪をつけて下さい。」


俺はそう言って頭を下げると、

左手を綾の方に差し出した。


綾はしばらく

動かなかった。


そして数秒の時間の後、

俺の手に触れた。


だけど俺の手に触れたのは

綾の手じゃなかった。


俺は左手の甲を見た。


俺の左手の甲の上に乗る数滴の滴。


綾の心からあふれ出した

かよわい気持ちだった。


綾の瞳からぽたぽたと落ちて、

言葉にならず

俺の甲の上に落ちた。