トイレに向かって
廊下を歩いていると、
待合室で今日の二人が
話しているのが見えた。
あの二人は確か…
『綾』と『朋樹』だったかな?
二人の表情はさっきと変らず
悲しげなものだった……。
俺は二人のことが
気になったけれど、
そのまま待合室の前を歩いて
トイレに向かっていった。
でも、
待合室の前を通る時に
俺は二人の会話を聞いてしまった。
二人が話しているのは、
俺の病気のことだった。
「俺たちのこと本当に何も覚えてないのかな……?」
朋樹という人はうつむいたまま
悲しい声で
綾という人に尋ねた。
綾という人は
その質問に答える代りに、
力のこもった声で
朋樹という人に向かって言った。