「綾が貸してくれた一冊の本に
救われたから。
だから俺もそんな本を
書けたらなって。」
「そっか…。
修君はすごいな。
そんな立派な夢があって…。」
「そんなことないよ!
人に自信を持って
言えるわけでもないし。
綾は立派な夢持ってるだろ?
人に自信を持って
言えるくらいの。」
「そんなことないよ?
私が保育士になりたい理由なんて、
ただ子供が好きだからとか、
単なる憧れだよ…。」
「そういうもの
なんじゃないかな?
夢って。
その夢を実現させた自分を
憧れて見えるから、
夢を実現させたいって
必死になって
頑張れるんじゃないのかな?」
「そいういうものなのかな?」
綾は少し不安げな表情で
俺を見つめてきた。
「きっとそうだよ。」
「ありがとう……
何か私、
夢に少しだけ自信持てた。」
綾はそう言って
俺に笑いかけた。
それを見て、
俺は笑顔を返した。
「でも、
お礼を言うのは俺の方だよ?
綾があの時、
あの本を貸してくれなかったら、
俺はこうやって将来のこととか
真剣に考えられなかったし、
作家になりたいって
思うこともできなかった。
だから綾には本当に
感謝してるんだ。ありがとう!」