部屋の中には先生が座っていて、
俺に座るように指示した。
「鈴木の進路希望のことだが…」
先生はそこで言葉を止めた。
俺は井上先生を見つめ、
言葉の続きを待った。
「本当にこれでいいのか?
鈴木なら大学進学を
選ぶと思っていたんだが。」
「はい。
自分なりにいろいろ考えてみて、
決めたことです。」
俺の固い意志を見て、
井上先生は納得し、
深くうなずいた。
「そうか…
でもどうして作家なんだ?」
井上先生の質問に
俺は迷うことなく堂々と答えた。
「俺が俺として生きた証を
残したいんです。
いろいろな方法があると思いますが、
俺は一冊の本に救われたから、
俺もそんな本を
書けるようになりたいんです。」