ＤＥＴＨ

ｶﾞﾁｬｯ

「行ってきまーす」

ﾊﾞﾀﾝｯ――


昨日遅くまでゲームをやっていたせいで寝坊をし、できるだけ遅刻を避けたかった俺は急いで学校に行こうと足早で家を出た。

すると何処からか、女の人の声が聞こえた。

｢こ…太っ…こ…太っ……｣

声のする方を見ると、近くには救急車一台、そして女の人が泣きながら足をフラつかせていた。

｢何でっ…何であの子がこんな目にっ…｣

あの子？

そう思っていると、救急隊員がタンカーに乗せた誰かを救急車まで運んでいた。


運んでいる最中、何度か｢ぅ゛う゛っ…｣とうめき声が聞こえた。

運び終えた後、中々乗らない彼女を救急隊員が優しくなだめ、｢さ、中へ｣と泣き崩れる彼女の背中を支えるように押しながら救急車に乗せ、ﾋﾟｰﾎﾟｰﾋﾟｰﾎﾟｰというサイレンと共にこの場を後にした。


今のは何だったのだろう…？

俺は訳の分からないまま携帯の時計を見た。

時刻はHRが始まる20分前――

「やっべぇ…！」

すっかりさっきの光景に気をとられ、学校の事を忘れていた俺は急いで学校に向かった。


この時、誰かがじっと俺を見ていた事など知るよしも無かった…