「はじめまして。よろしくね？大空さん、かな？」


その言葉を聞き、頭に稲妻が走る。


どういうこと？冗談でしょ？


「え？私だよ、私。音羽。何いってるの、星？」


女子は疑いの目を向ける。いや、不信な目だ。


"なにいってんだ、コイツは。あっち行けよ。"


とでも言っているような鋭い目線。


私は一瞬怯んだ。




「ん？俺と会ったことある？」



頭の中でぐるぐるとその言葉がリピートされる。


そのにこやかな顔はこれ以上聞いたって無駄だ。ということを悟っているようだ。


「う、ううん。やっぱり人違いだったみたい。ごめんね。じゃ。」


そう告げると教室を飛び出した。


私の足は屋上へ。



涼しい…


風が9月の残暑を吹き飛ばしてくれる。


制服のシャツを指でつまんで浮かした。


肌と制服の間に風が通り、火照った体を冷やしてくれる。


『はじめまして。』


星が絶対に発することのない言葉。


なんで、なんで…？


そればかりが頭の中を支配している。


私のこと、忘れちゃったの？


あの言葉は嘘だったっていうの？


やっぱり、本人に聞くしかないっ。


私の足は再び教室へと走り出した。