なこを抱えて、新しい事務所に入る。
今日の午前中に引越しが終わったらしい。
まだ辺りはダンボールでいっぱいだけど。
「こっちだ」
「社長室?」
「あぁ」
前の事務所よりも広くなった。
とくに社長室なんてヤバイ。
俺、ここに住めると思う。
周りはダンボールだらけなのに、何故か既に並べられているナゾの置物たち…。
順番おかしいだろ…。
「あれ、なこちゃん寝てんのか?」
「はい」
「……ヨダレ」
「…はい」
社長の目が、俺を哀れむ目になってる。
そんなに酷いのか…ヨダレ。
「とりあえず寝かせるか?ベッドあるぞ」
「え、社長のベッドじゃん」
「あからさまに嫉妬すんなよ。つーかベッド新品だから」
嫉妬じゃねーし。
しかもなこが寝た後のベッドを他の誰かが使う方が嫌だし。
社長とか絶対なこが寝た後シーツ洗濯する前に寝るもん。
「いいッス…」
「疲れねぇ?」
「軽いんで」
なこを抱いたまま、バカでかいソファに座る。
目の前には社長。
その隣には、いつからいたのか、ケンさんがいる。
…結構真面目な話っぽい?
「単刀直入に言う」
「…はい」
「なこちゃんにデビューの話が出てる」
…ふーん、デビューね。
デビュー…。
デビュー⁉︎なこが⁉︎
何で、どうして、Y?