予選が終わった頃から、気が付くと視界に秋人がいて。
正直、戸惑ってる自分がいる。
“アキの想いだから”
予選決勝の日に秋人が言ったこの言葉が頭から離れてくれなくて、そのせいで秋人のことが必要以上に気になるだけだと、自分に言い聞かせる。
「茜ちゃん?」
病院に着くと、ロビーで名前を呼ばれてその声を探す。
「おじさん」
スーツ姿のアキのお父さんが、購買から出てくるところだった。
「久しぶりだね。明希の見舞いに来てくれたんだ?」
「はい」
「いつもいつもありがとね。明希もきっと喜んでる」
目を細めて微笑んだ顔がアキにそっくりで、懐かしさで鼻の奥がツンとする。
あの事故以来涙脆くなって、不意にアキを思い出させるものを見ると、こうやってすぐに涙が出そうになってしまう。