私は多分、面倒な女になると思う。

もう恋愛感情ではないけれど、心の中には今でもアキがいる。
それは一生消えることのない特別な存在なわけで。

当然、他の男を忘れられない女を選ぶ男性がいるとは思えない。

一途で尽くしてくれる人がいたら、そっちの方が絶対良いに決まってるんだから。


「秋人君は違うと思うけどな」


「え?どういうこと?」と、口を開きかけた時。


「茜。顔、真っ赤じゃん」


話題の渦中にいた人物の登場に、ドキッと心臓が跳ね上がった。

振り返ると、いつの間にか秋人が後ろにいて、私の隣りにしゃがんだ。


「ほら、帰るぞ」

「え?帰る?」


秋人は私の返事も聞かず、私の鞄を持ってスタスタと下駄箱に向かう。

私は「ちょっと待ってよ!」と小言を言いながらも、秋人と二人になれることに嬉しさを感じて口元が緩んでしまう。