弥生から聞く話は寝耳に水なことばかりで、自分がどれだけ鈍くて、アキのことしか考えていなかったのか思い知らされる。


「だから秋人君の競争率は凄かったわね。しかも、当時の秋人君ってちょっとぐれててクールな感じがまた良くて」

「へ、へぇ…」

「あの子、茜よりも全然色っぽいし。秋人君は茜に二年も待たされてるし。別の女にころっと乗り換えるかもしれないよ?それでもいいの?」


弥生は頼んでたビールを受け取ると、すぐに口をつける。
「美味い!」とどこかの親父みたいな声を出すと、上唇についた泡をおしぼりで拭った。


秋人が、別の女の子と…?

頭の中で想像する。
手を繋いで、仲睦まじ気に寄り添いながら歩く秋人と、私じゃない他の女性。

私はそれを遠くから眺めていて…


「そんなのイヤ‼︎」


無理。
想像しただけで、泣けてくる。

私じゃない女の子に触るのも、笑顔を向けるのだって本当は嫌。