「―― 3時半……。そろそろ来るかな?」
爽やかな5月の風が、芽吹いたばかりの新緑の葉をさわさわと揺らしている。
ひらひらとそよぐスカートの裾を押さえながら、昨日約束をした裏庭で潤君が現れるのを待っているところだ。
手ぶらでは申し訳ないと思い、登校途中にコンビニで購入した缶詰タイプのキャットフードもしっかりと持参して。
……猫ちゃん、出てきてくれるかなぁ……?
今まであまり動物から好かれたことがなく、いつも私からの片道一方通行の愛情ばかりだったためよからぬ不安が頭をよぎる。
「大丈夫大丈夫!」と自分に言い聞かせるようにぶんぶんとかぶりを振っていると
「おい……、大丈夫か……?」
怪訝そうな顔をした潤君が、校舎の陰から姿を現した。