「え……えっ? あれ? お母さん?」
「うん?」
慌てて起き上がろうとする私を、お母さんがまだ寝てなくちゃダメよ、と優しく制す。
「お母さん、私昨日どうしたんだっけ……」
「あれ? 雫、覚えてないの?」
「うん……」
「あんた昨日ずぶ濡れで帰ってきて、そのまま熱出して倒れちゃったのよ?」
「熱……」
そうか、だからあんなに寒かったのか……。
まだぼんやりとした頭で、ゆっくりと昨日へと思いを巡らせた。
「そうよ?。 翔太に手伝ってもらって、あんた部屋に運ぶの大変だったんだから」
「翔太……」
「あとで翔太に会ったら、一応お礼言っときなさいよ」
「うん、わかった」
元気のない声で、お母さんに返事をする私。
「具合はどう? 熱もだいぶ下がってきたから、もう心配はないとは思うけど……」
「うん、大丈夫だよ」
「お腹はどう? 何か食べられそう?」
「お腹……。ううん……何も食べたくない……」
そう言って顔を曇らせる私を、お母さんが心配そうな顔で見つめている。
そんな私の額に乗っていた濡れタオルをどけたかと思うと、お母さんが優しく頭を撫でてきた。