「雨……冷たい……」



冷え切った体を、自分の両腕でギュッと抱きしめる。



結局あの後、2人の会話はほとんどなかった。


DVDも見るには見たのだが、ほとんど内容など覚えていない。


あまりにも気まずい雰囲気に耐えかねて、DVDを1本見終えたところで帰ってきてしまった。



来る時には降っていなかった雨も、今はシトシトと空から落ちてきている。


まるで、泣けない私の代わりに空が涙を流してくれているようだった。



「雨降るって天気予報でも言ってたのに傘忘れてくるなんて、私ってば相当浮かれてたんだな……」



朝の自分を思い出すと、なんだか胸がギューっと切なくなる。



「好きって言われたわけでもないのに、勝手に妄想して……勝手に期待して……挙句の果てに告白する前にフラれて……。
私、バカみたい……っ。こんなに悲しくても涙ひとつ出せないなんて……ほんと……バカみたいっ……」



今更ながらに、能天気だった自分のマヌケさが心に染みた。



「もっと……もっと雨がたくさん降ればいいのに……。お願いだから、私の悲しみも一緒に洗い流してよ……」



そう言って私は、家までの道を雨に打たれたまま歩き続けたのだった。