「絶対このチャンスに水沢君をモノにしなさいよっ!」



ここ数日、耳にタコが出来る程明里から聞かされた台詞が、不意に頭をよぎる。



「家に呼ぶくらいだから、もしかしてキスだけじゃ済まないかもよ~?」



そういえば、そんな事もニヤニヤ笑いながら言ってたっけ。


まさかとは思うけど、潤君も健全なる高校男子には違いない。


一応……本当に念のため、一応心の準備はしているけれど、想像しただけでも心臓が破裂しそうだった。



「おっと、そろそろ時間だから行かなくちゃ」



最後にもう一度だけ頭の上から足の先まで確認をして、オートロック式の呼び出し用インターホンへと近付いた。



「うぅっ、緊張する」



オートロック式のインターホンなんて、もちろん初めてな私。


ドキドキしながら震える指先で部屋番号を入力した。



プルプルプルッ……プルプルプルッ……



無機質な呼び出し音が、更に私の緊張をかき立てる。


程無くして、スピーカーから「はい」という落ち着いた男性の声が聞こえてきた。