それから今日したことを軽く報告したり、どうでもいいような些細な出来事を話したりしているうちに随分と時間が経過してしまっていた。


誰かと話をしている間は余計なことも考えなくて済むから何だか安心する。


独りじゃないことを簡単に確認できるし、変わらないことに安心したり、私の好きな時間の過ごし方だ。だから、桂馬を引き留めるように、だらだらと話を続けていた。


『てかさ、千夏そろそろ眠いだろ』


自分でも時々意味不明なことを言い始めていることには気づいていた。やっぱりごまかせていなかったか。笑いながら聞いてくる桂馬には電話越しだから見えないのに、そうだよと首を縦に振った。


声に出さなきゃ伝わるわけないじゃん。自分の行動に、自ら突っ込んだ。


そろそろ限界らしいと、見え隠れする奇行に悟った。


「うん、眠くてヤバい。落ちそう」


少しの間の後、今度は言葉にして桂馬に伝えた。


『そろそろ寝よう。千夏も疲れてるみたいだしな。また明日』


「うん、また明日ね」


私の状態を察して、桂馬から終わりを告げてくれた。絶対に私からは言わないって、彼はもう知っているから。


『「おやすみなさい」』


重なった声を合図に切った電話からは、ツーツーツーと無機質な音が規則的に聞こえてくる。


ダメそう……精一杯の力を振り絞ってベッドから身を起こすと、ゆっくりと立ち上がりのそのそと電気のスイッチへと向かった。





――カチっ


一気に部屋の中は暗くなり、倒れるようにベッドへと寝ころんだ。


本当にもう限界だ。


瞼は重く、もう開いてくれそうになかった。睡魔に抗うことをやめて、身を委ねることにした。