お父さんが出勤してからは、ゴミ出しも済ませてしまった。そして毎日はやらない掃除に取り掛かった。


もともと嫌いじゃないから、始めたら気分が乗ってきてリビングだけじゃなくて、トイレにお父さんの寝室に家中を掃除して廻った。


体力的には疲れてしまったけど、きれいになった家は気持ちが良くてとても清々しい。






「……千夏、帰ったよ」


揺さぶられる感覚に真っ暗闇から帰ってくることになった。目を開く行為と、光を眩しいと感じることで、初めて自分が寝ていたんだと気がついた。


徐々にはっきりしてくる視界とすっきりとしてきた思考によって、やっとお父さんの存在をとらえることが出来た。


疲れ切って、少しだけと身を沈めたソファでそのまま意識を飛ばしていたらしい。


無理な姿勢で寝ていたのか、起こした体はあちこちが軋むように痛い。


「おかえりなさい。ごめん、眠っちゃってたね」


何時なのだろうかと時計を確認すると、まだ19時と思ったよりも早い時間にホッと胸を撫で下ろした。最近忙しかったらしいお父さんが、この時間に帰宅しているのは久しぶりかもしれない。


「今日は早かったね」


「あー、連日の残業でなんとかひと段落したからね」


詳しいお父さんの仕事の内容は私には分からないけど、ずっと忙しそうだったことは知っている。だから、これで少しは体を休めることも出来るかなと、安心した。


「ご飯は出来てるよ。食べるよね?」


「もちろんもらうよ。実は空腹で空腹で堪らなかったんだ」


すぐ用意するからと、キッチンに走りコンロにスタンバイしている鍋に火を付けた。もう温めるだけになっているから、あっという間に出来上がる。