予想以上に遅くなってしまってから、桂馬のご飯を作る約束をしていたことを思い出した。


一緒に食べるなら私も遅くなると思いお父さんに連絡をすると、自分も遅くなるから桂馬の家でご飯を一緒に済ませておいてほしいと言われた。


……なんだ、慌てる必要なかったね。


「桂馬、私もご飯食べとけだって。だから、ちゃんとご飯作るよ。何がいい?というか、何が材料あるの?」


傍で私とお父さんの電話口でのやり取りを聞いていた桂馬に、次々に質問する。


私的には、ちゃちゃっと作れて、すぐに食べられるものがいいんだけどな。すぐにでも食べたいし。


「今はあんまり材料ないと思うけど……野菜炒めとか、簡単なものでいいよ。俺もお腹空いたしな」

「了解」


手の込んだものを作る間、私が我慢できるか怪しいところだったから、そのリクエストはありがたい。





キッチンに入った私は、野菜室から適当にいくつか材料を取り出して、冷蔵庫からウインナーも出し、適当にザクザクと包丁で切っていく。色んな道具の場所は分からないから、桂馬に用意してもらった。


途中でお米の存在に気づいて、慌てて炊飯器を確認すると、空っぽで焦ってしまった。どうしようか、おかずが出来上がっても、米がなきゃ物足りない。


「あー、カップ麺かコンビニの予定だったからな……」


炊飯器の前で固まる私を不思議に思ったのか、隣に並んでジャーを覗き込み、苦笑しながら桂馬が呟いた。いやいやいや、笑えないからね。ある意味死活問題だからね。


「……あっ」


「どうしたの?」


急に声を上げた桂馬は、くるりと体の向きを変えて冷蔵庫へ向き直っていた。雑に冷凍庫を開けたかと思えば、中をガサガサと漁り始めた。


「千夏、良い知らせだよ。冷凍ご飯があったよ」


ずいっと差し出されたのは、ラップに包まれた炊いたご飯だった。ラップには丁寧に日付も書かれていて、2日前と問題なく食べられそうな日付だった。


几帳面な桂馬のお母さんに感謝だなと思った。よし、これで食事に有り付ける。