「千夏、どうした?考え事?」


あの日から、早いもので半年が経過した。高校一年生だった私たちも、今では二年生。桂馬とまた同じクラスになれて、いつも二人で過ごしている。


藤堂さん、中西くん。そう呼んでいたのに、いつの間にか千夏、桂馬と呼びあうように変化していった。


桂馬の呼びかけにハッとして、慌ててどこかへ旅立ちかけていた思考を引き戻す。


「ごめん、なんでもないよ」


付き合いはじめの頃を思い出していたら、桂馬の言葉が耳に届いていなかったらしい。二人の馴れ初めを思い出していました、なんて恥ずかしくて言えるはずもなく、誤魔化した。


そんな私の顔を、彼は心配そうに覗きこんでくる。何かあったとか、気にすることじゃないのにね。


素っ気無く答えたのには、もう1つ理由がある。それは……距離。近すぎる距離。未だに距離が近づくと、ドキドキと胸が高鳴ってしまう。顔を染めることも少なくはない。


今は顔に出さずに済みホッとした。顔に出してしまったら、きっとどうしたんだと、答えさせられていた。それも恥ずかしすぎる。


今度は聞き逃さないように、慌てて彼の言葉に耳を傾ける。


「はぁー、またボーッとして」


大きなため息の後、呆れたような声で言いながら、私の頭を彼はくしゃくしゃにする。私がボケッとしていることは日常茶飯事だからか、とくにそれ以上追及されることはなかった。


「ごめんって言ってるでしょ」


少しだけ頬を膨らませながら、もう一度謝罪する。私は知ってるよ。こうやって謝ると、桂馬は仕方ないなって、だいたいの事は許してくれる。