暑くて暑くて堪らなかった私は、どこかで休憩しようと帰り道におねだり。


「仕方ないな」


と、緩んだ顔で、ファミレスに連れて行ってくれるとじいちゃんは言う。


「やった、ありがとう」


メロンフロートにしようか、イチゴパフェにしようか、ケーキとジュースにしようか、と頭の中は甘くて冷たいおやつでいっぱい。


よだれでも出てしまいそうだった。


何度か連れてきてもらったことのある店が見えてきたとき、背後から大きな声がたくさん聞こえてきた。


少し遠かった声は、どんどんと私たちに近づいてくる。


「どけっ」

キャー!!


男の声と、女の人の甲高い声が思っていたよりも近くで聞こえ、驚いた私たちは何事だろうと慌てて振り向いた。


同時に、すぐ傍を男の人が通り抜けていった。私たちを追い抜いた後に、男はピタリと足を止めた。


そして、ゆっくりと振り向き右手を上へと掲げた。男の手にはキラリと光を反射するものが握られていて、そこから何かがぽたぽたと滴っている。


なんだろうと目を凝らそうとしたとき、男は手の中のものを勢いよく自分の首へと突きたてた。そこで初めて男が持っていたのがナイフだと気がついた。