「和樹君って何の話をしているの?」


鈍器で殴られたような強い衝撃を受けた。


やってしまったと、ここでやっと気がついた。だからさっきからあんな反応だったんだ。


サーっと顔から血の気が引くのを感じた。


「……ごめん、なんでもない。気にしないで」


無理やりに笑顔を作って、誤魔化した。案の定、納得できていなさそうな沙耶ちゃんは、奇怪なものでも見るような顔をしたままに、首を捻った。


目を合わせてしまったら、動揺してしまいそうで、俯きがちに慌てて目を逸らした。


あーあ、久しぶりにやってしまったな。あんなに気をつけていたのに。


だって朝から桂馬と普通に昨日の話をしたじゃん。だから大丈夫だって思ってたのに……って、桂馬?


そうだよ、おかしい。桂馬と話をしたから安心しきっていたんだ。


やっと、こんなことになってしまった原因に気がついた。同時に、違和感にも気づいてしまった。


桂馬の傍へと戻り、俯いていた顔をあげると、驚いた顔をして私をじっと見つめていた桂馬と目が合った。


きっと同じ事に気づいたんだろう。


「……」

「……」


しばらく唖然と見詰め合ったまま、動けないでいた。