「やべっ、今日はのんびりし過ぎたらしい」


ポケットに入っているケータイで時間を確認した桂馬が少し焦った声をあげた。

そんなに?と思い、彼の手の中のものを覗き込むと、思っていたよりも随分と時間が経過していたことに私も気づいた。


「本当だ、ちょっとやばいね」


苦笑を浮かべながら彼の顔を覗き込むと、同じく苦笑いを浮かべていた。


「急ごうか」


桂馬の言葉に、私はうんと頷いた。


今まではゆっくりと歩いていたけれど、少しだけスピードをあげた。





校門が見えてくる頃には、私たちの他にも周りに生徒が増えてきて、皆同じように少し急ぎ足だった。


「「おはようございます」」


校門を通り抜けながら、先生へと挨拶をした。


校門には先生が2人ほど立っていて、時計をチラチラと確認している。


そんな様子から本当に今日はギリギリだったんだなと感じた。私の準備具合はいつもと変わらなかったのにな。


大きな違いはなかったはずなのに、少しずつの遅れがそうさせたんだろう。いつのよりちょっと玄関での話しが長くて、いつもよりちょっと話に夢中になってゆっくり歩いて、そんなちょっとした事が原因だろうな、と原因を勝手に分析してみたりした。


遅刻したわけではないから、問題はないけどね。桂馬とのゆっくりとした朝の時間が好きなのに、と邪魔されたような気分になっただけだから。