長沢とは、一緒に行動することが多かった。

大学でも放課後でも休日でも。

だがその行動のいずれもが、公共空間、衆人環視の世界だった。

二人きり――それはだから、初めての空間。

だからか、ただ、手を握られただけでも、大胆な行為に見える。

彼の真摯な眼差しも、それ以上のなにかを含んでいるように見える。

私はその手をそっと払い、

「違う」

と端的に答えた。

端的に答えた――のが、いけなかった。

「なんだよっ、それ!!」

「っ!」

長沢が、大きな声を出す。

瞬間、私の体は一気に、ベッドへ押し倒されていた。

安いスプリングの反動で、私の体が跳ねる。

その上に、長沢が四つん這いになっていた。

完全に、襲われている体勢。

しかしなぜか私は、キィキィと余韻を響かせているベッドよりもずっと、落ち着いていた。

ただ、向けられた眼差しに、同じくらい一直線に、応える。