(あの狐目め……これ見よがしに……)

ポケットの中から、札を二枚、取り出す。正直、もはやどちらが本物かわからない。

いや……どちらが本物など、言えないかもしれない。

どちらも見た目、『草薙仁の呪符』なのだから。

(まったくもって腹立たしい)

恨み言は、心中に留めておく。

魔法陣が起動している今、私の技量では余計な発言は危ういからだ。

手中の呪符を、中へ放る。

二枚の紙切れはフワリと舞い、東に置いている燭台の上で、気を付けのようにピンと伸びた。

定義を、言霊に付与する。

「我、草薙仁、解明者なり。呪符の分解を命ず」

魔術師は誰しも、自分の城を持っている。領域と言ってもいい。

この中であればおよそ、魔術師は公式に則って万能だ。

たとえば、組み上がっているパーツをバラバラに解き明かしてしまうとか。