魔術は公式の理解で、その使役の可否が決まる。

たとえば今のように『場』をなんらかの定義として固め、これをどうしたいか、手順としかるべき要素を与えれば、あとは実行される。

魔術師は、現象が起こるよう、ひとつの回路を作る者だ。回路さえ作れれば、電気は自然と灯る。

だから私は魔術を、『不思議な自然現象』と定義している。

雨が降っていただけあり、屋根は濡れていた。

しかし、なにせアパートが古い。

表面がザラザラガタガタになっているのだから、踏ん張ることも容易かった。

四方に据えたオブジェを点に、四角形と円が私を囲んでいる。

円と四角形との空間にもまた円が点り、その中は私が詰め込んだ公式が、漢字とユダヤ記号、天使のアルファベットと呼ばれる秘密文字で組み込まれている。

数種の文字や記号を混合させるのは珍しくないが、それなりの技術が要る。

それを五年で私はやってのけだ。

ゆえの自信を持っていたのだが……