私はこうやってーーー過去の記憶を思い出しても、発作を起こすことが少なくなっていた。
前までは、中学時代の事を話すなんて、絶対出来なかったし、
発作も、あの昼休み以来一度も起きていない。
自分でも戸惑うほどの変化だった。
「.........ほんと、なんでだろうな」
ポツリの呟くと同時に、思い浮かぶのはナツキの顔。
(...私、ナツキに惹かれてる)
優しくて、いつでも笑わせてくれて、綺麗な色で溢れかえっているナツキ。
周りの空気は明るいのに、そばにいるだけでどこか落ち着く。安心する。
ユウハとも、カレンとも違う、特別な存在になりつつあった。
ーーー今思えば、この時にはきっと既に、ナツキのことが好きだったのだ。
ーーー気づこうとしなかったのは、ハルトを失ってから出来た心の壁と、
ーーーもしかしたら、罪悪感があったからかもしれない。
この時の私はまだ、
何も悩まず、何も気づかず。
自然に口角が上がるくらい上機嫌で体操服に着替えた私は、弓道場へと走った。