《こんにちは夏軌です!
カトミチからメアド聞いた!
登録よろしゅうー!》
やっぱり、ナツキからだった。
(びっくりした...。
ミチコからって...あぁ、そういや前に教えたな)
少し考えて返信をする。
《こちら神村です!*\(^^)/*
メールありがとう、登録完了です!》
送信、と。
家に着いても、しばらくメールのやりとりは続いた。
当たり障りの無い会話を紡ぎながら、時々文面を見て一人で笑ったりして。
メッセージのやりとりは、午後十一時を過ぎた頃に、私からストップをかけた。
《そろそろ寝るね、おやすみ》
《おう、また明日ー!》
また明日。
明日が来るなんて保証は無いのに、明日も会えるとナツキは信じて疑わない。
記憶の中のーーーあの彼も。
ーーー『また明日な!』
ギュッと目をつぶり、耳を塞ぐ。
言いようも無い不安と孤独感に襲われる。
ーーーだが、心臓はおとなしくしていた。
過呼吸が起こる気配も無い。
(...落ち着いてる。なんでだろ)
思わずベッドから立ち上がり、窓の外の星空を見上げた。
満月一歩手前の明るい月を眺める。
ーーー『ハルトは月みたいだね』
ーーー『じゃあアリナは星だな』
(...やっぱり落ち着いてる。
月見ても...。こんなの...初めて...)
今思えば、この時には既に。
変わっていたのだ。
私の心理も、周りも、環境も。
終わっていたのだ。
暗く息苦しいトンネルは、この先には続いていなかった。
そして、始まっていたのだ。
これから先、ずっとずっと忘れることはない、深く長い物語が。