ユウハは幼稚園のころ親が離婚して、母親に引き取られた。
...その母親が、コロコロと男を変えながら、ベッドの上で行為をしているのを見たのが小学六年生の頃だそうだ。
女性という存在に嫌悪感を抱くのも当然で、此処で出会った時のユウハは『女性不信』という言葉がピッタリだった。
私の受けていたちゃっちいイジメなんかとは規模が違うけれど。
...傷を背負って生きているという共通点のある私達は、
きっと、互いが必要だったのだろう。
笑顔を見せるようになるまで、時間はかかったが、
彼のそばにいると安心できた。
ーーーハルトの件が起きたのは、ユウハと出会って一年が経った頃。
部屋に閉じこもって、置物のように身動きもせず。
何も、涙を流すことさえもしなかった私を外に連れ出してくれたのは、ユウハだった。
ユウハの心の壁を破ったのは、きっと私だ。
私の心を動かしてくれたのも、間違いなくユウハだ。
心から、信頼できる人だった。
「なぁ、歌ってよ」
「リクエストは?」
「アリナにお任せ〜」
「じゃ、お気に入りの新曲!」
ベンチの端っこを右手の指でコツコツ叩いてリズムを取る。
背筋を伸ばして、自由気ままに、のびのびと歌えるこの場所が、私は...いや、私たちは大好きだった。