(自転車通学は初めてだ...。
中学では部活の遠征以外は徒歩通学厳守だったし。
なんかワクワクするっ!)
自転車に跨って、いつもの通学路をゆっくりとこぎ始めると
いつもの光景が、なんだか別の世界みたいに見えるような気がする。
見慣れた風景が、普段よりも足速に通り過ぎていく。
花壇が綺麗な近所の豪邸。
大きな公園の横にある、小学生達の通学路。
少し寂れた駄菓子屋。
そして、一ヶ月前まで通っていた中学校ーーー。
(...中学校をこんなに穏やかな目で見れたのは久々だな)
待ち合わせをしている友達の家へ向かって、ゆったりとしたスピードで進む。
肩をギリギリ越す長さの黒髪を風に遊ばせながら、小さくお気に入りの恋の歌を口ずさんだ。
「♪〜...〜♪〜...♪〜〜...」
風に乗って、何処までも流れていく歌が、私は小さい頃から大好きだった。