入学式から一ヶ月が経った。
【四月三十一日】
「...♪〜...〜♪〜♪〜...」
遅咲きの桜の下、小さいが透き通る自慢の歌声を響かせて、
「♪〜...〜♪〜...♪♪〜...」
もうボロボロのベンチに腰掛けて、私は歌っていた。
ここは、
私の家の近くにある公園に隣接する神社の、そのさらに向こう側にある、小さな森。
森、というより林と言った方が良いか。
小さな桜の木の集まる、緑の場。
私は小学生の時に此処を見つけ、辛い時や悲しい時、嬉しい時や幸せな時、
心が動いた時には、此処に来て歌うのが習慣になっていた。
神社のかなり奥まで入らなければ見つからない所なので、私以外に人が居るのを見たことが無い。
ただ一人、例外を除いて。
「...よっ!アリナ!」
ーーーそう、この人を除いて。