そのあと、少し落ち着いた頃に、ポツリと無意識に出てきた。


弱っていた私の本音。





「...ほんと、もう...馬鹿みたい...。
強くならなきゃ、いけないのに...」






ーーーそれを聞いたナツキは、何を思ったのだろうか。


ーーー少し考えるような仕草をした後に言った言葉は、


ーーー今でも鮮明に覚えている。






「......んー...詳しいことは知らないけどさ。

誰でも捨てらんない過去はあるし、トラウマもある。神村さんはそれが大きいだけだよ。

無理して強くなろうとして生きてても、笑えない人生なんて楽しくないぞ」

「...楽しく?」

「おう!人生は楽しむためのもんだろ。笑っときゃいいことある」




ーーー真っ直ぐな言葉と笑顔が、真っ直ぐに私の心に入って来る。


ーーー自然に、本当に自然に、この人なら信じても良いって、そう思えたんだ。




「...アリナでいいよ」

「...え、」

「アリナって呼んで!
いつか、ゆっくり話そうと思う。ナツキくんなら、信用出来るかなって思えたから」



キョトンとした表情の後、一瞬ではにかむような笑顔を浮かべたナツキは、言った。



「アリナ、よろしくな!俺もナツキでいいよ」

「...うん。ナツキ、よろしく!」




自然に口角が上がった。


最後に男に向かってこんなに素直な笑顔を見せたのは、いつだっただろうな、なんて思いながら。




この日、ハルトがいなくなってから、ユウハとアスト以外では初めての、


胸を張って「友達だ」と言える、男友達が出来た。