私が保健室を出たのは、六時間目の授業が終わって、掃除の時間になってからだった。
「ありがとうございました」
「はい、お大事にね」
先生に挨拶をして教室に戻ろうとするが、直行する気にならなかった。
(みんなの前で倒れちゃったしなぁ...戻るの恥ずかしいや)
保健室の前の廊下を、ぶらぶらと彷徨っていた。
...声をかけられたのは、階段に差し掛かろうとした廊下の角だった。
「神村さん!」
聞き慣れた声に振り向くと、ナツキが小走りでこっちに駆けてくるところだった。
「今様子見に行こうとしてた。先生に頼まれて」
「あ...えっと、保健室運んでくれたのナツキくんだよね?ごめんね、重かったでしょ」
「え、いやむしろ軽すぎで...ちゃんとメシ食え!ってそうじゃなくて...体調大丈夫か?」
...カレンは、ナツキには事情を説明してないのだろうか?
「もう大丈夫!ごめんね。...レンから、何か聞いた?」
「...中村さんからは、何も聞いてないよ」
「あ、そうなんだ...ごめんね迷惑かけて」
「ううん。...あのさ」
その時気がついた。
ナツキの表情が、どこか暗い。
どうしたんだろうと思い、問おうとしたが、その前にナツキが話し始めた。