二年一組の教室。
二人の男女。
自分の席に座って、黙り込んでただ涙を流す女の横に跪き、男は言う。
『ほら、拭けよ』
『...ハルトの汗臭いタオルなんていらない』
『まだ使ってねーやつだよ、ほら』
少し乱暴に、女の頬をつたう涙を拭う。
『俺がいるから。だから泣くなよ』
『...そんなこと言われたら、余計泣けちゃうよ』
机に手をついて、俯きがちな女の顔を覗き込む。
そして問う。
『なんでだよ』
涙を流しながら微笑む女は、答える。
『嬉しいし、恥ずかしいもん』
『アリナが泣き止むまで、何度でも言ってやるよ』
悪戯っ子のような、無邪気な笑顔を浮かべて男は言った。
『俺がいる。だから泣くな』
二人の視線が交差した。
そして再び。
『泣くな!』
ーーーその輝くような笑顔に、私は何度救われたことだろうか。