「レン、どうしたのー?」

「数学の教科書忘れた〜貸して♡」

「あ、あのねぇ...初日ぐらいちゃんと持ってきなよ...」








カレンは昔から忘れ魔だった。


学校のテストの日に消しゴム忘れるし、体育の授業での実技テストで体操服忘れるし、バスケ部の大会ではバッシュを忘れたらしいし。





「持ってくから待ってて」

「さっすがアリナ〜愛してる!」





廊下と私の席とはかなり距離があるために、かなり大きめの声で喋っていたせいか、ふと周りを見ると結構な数の人がこっちを見ていることに気がついた。


それにもデジャヴを感じ、普通に恥ずかしくなる。


加えて、数人の男子が「あの子可愛くね?」などと言っているのも聞こえた。


苦笑しつつ、ヒトミに「行ってくる」とだけ言って席を立ち、足早に廊下に向かう。











すると、教卓の前を過ぎたあたりで、足に何かがぶつかった。


驚いて足元を見ると、ルーズリーフを丸めた紙切れが落ちていた。


ほっとく理由も無いので拾ったら、教室の後ろの方から大声が飛んできた。







「悪い!捨てといてもらってもいい!?」

「外してんじゃねーよコウタ〜」

「ナツキが邪魔するからだろ!」







この声...


半分誰か確信しつつも見てみると、昨日の男子三人がはしゃいでいた。





ゴミ箱を探すと、私が立っているところから一メートルくらいのところにあった。


大方、あの中の誰かがゴミ箱にゴミを投げて、逸れて私の足に当たったのだろう。
ゴミ箱に向かって二歩歩く。










すると、再び元気な声が飛んできた。