ゼエゼエ言いながら自転車置き場に辿り着いた私を見つけ、カレンが叫んできた。
「記録!八分四十三秒でーす!遅いよアリナ...って大丈夫?」
どうやら真面目に時間を測っていたらしい。
膝に手をついて息を整えている私を不審に思ったらしく、カレンが心配してくれている。
「ふぅ、だいじょぶっ。お待たせ〜...」
「急ぎ過ぎ...本気で三十秒以内目指してた?」
なわけあるか。
「レンのこと待たせてるから、急いで走ってきたんだよぉ...」
こんな彼女を見ていると歩いて来ても良かったかもと思う。
少し呼吸が落ち着いた私は、大きく息を吐いた。
テニス部で教えてもらった、持久走後に息を整える呼吸法だ。
走ったせいでバクバク鳴っている心臓を抑える。
「...ふーっ。OK。落ち着きましたぜダンナ」
「OKダーリン。とっとと帰ろうぜ」
「オーケーオーライ」
意味不明なやりとりをしながら校門を出て、カレンの家に向かって歩き出した。