「あー...しまった...」
「アリナ?どうしたの?」
鞄の中を探っても、目当てのものは見つからない。
立ち尽くしている私に、外履に履き替えたカレンが寄ってきた。
「ごめんレン、教室にスマホ忘れてきちゃったから、先にチャリ置き場行ってて!」
「あらら、了解〜。三十秒以内ね」
「オリンピック選手でも無理だわ」
一年生の教室は四階なため、階段を登るだけで息が上がるのだ。
走る気にもならず、のんびり行こうと思い歩き出した。
「あーもう面倒いなぁ...」
HR暇だからって、机の中でこっそり携帯いじったりしなきゃよかった。
先生にバレそうになって、慌てて机の奥にしまったんだよな。
無心でひたすら登り、長い階段を終え、ようやく見えた教室に入ろうとすると、中から声が聞こえた。