「それじゃ、帰りは下駄箱で待ち合わせね!
ほら泣くな!レンは素は元気でいい子なんだから、笑顔笑顔っ!」
「うん...よしっ、頑張る!また後でね!」
「ばいばい!」
長い階段を登ってすぐの廊下を、レンは西側に、私は東側に歩き出す。
私のクラスーーー八組の教室はすぐに見えてきた。
「...それにしても一学年九クラスとか多すぎでしょ...さすが進学校...なのか?」
さっきは強がったことを言ったが、実際私もレンと離れたことは不安なのだ。
でも私がそんなことを言うと、カレンも間違いなくネガティブ思考になっただろうから、励ますだけにしておいた。
八組の教室のドアの前に立って、小さくため息をついた。
ーーー中学では、人間の黒い部分を死ぬほど見てきた。
ーーー心身共にボロボロになったあの日々。
ーーー二度とあんな日々には戻りたくない。
ーーーそんな気持ちから、私は自然と他人の裏の姿を探してしまうようになってしまった。
そして気付いてしまった。
裏が無い人間などいないと。
そして思ってしまった。
ーーー私はきっともう、カレン達以外の人間を愛することは出来ないだろうと。