「ただいま~!」



なっちゃんが帰って来たのは、夜の11時過ぎだった。



「遅かったんだね。」

「ごめん、ごめん。
何かと話が長引いてね。」

「明日はゆっくり出来るの?」

「うん、明日は何の予定もない。」

「そう……ちょっと相談があるんだけど良いかな?」

「うん、良いよ。
お風呂から上がったら聞くから、ちょっと待ってて。」



そうは言ったものの、なっちゃんに相談しようと思ってたことは実はもうけっこうどうでも良くなっていた。
どうでもいいというのは少し違うかも知れないけど、僕が今、本当に相談したいことは別のことで……
だけど、そのことは話せない……話したくてたまらないけど、それだけはだめなんだ。
たとえ、なっちゃんにでも絶対に……







「……それで、相談って何?」

「うん……実は、小太郎の事なんだけどね……」

僕は先日から感じていたことを、なっちゃんに相談した。
僕が話す間はずっと黙って聞いていたなっちゃんが、話が終わると大きなため息を吐き出した。



「あんたは本当に心配性だね!
そんなこと、なんでもないよ。
人それぞれ、いろんな生活スタイルがあるんだから、そんなこと気にしない。」

「なっちゃんは良くても問題は小太郎だよ。
小太郎が小学生になって、僕のせいで小太郎がいじめられるようになったらどうするんだよ。」

「大丈夫!こたはそんなことではくじけないよ。
まぁ、確かに最近のいじめは酷いらしいけど、もしもそんなことになったら、もう学校なんて行くことないよ。
フリースクールかなにかに行かせるから。
あ、そういえばあんたもそこそこ成績は良かったじゃん。
そうなったら、あんたが家庭教師になって、こたに勉強を教えてやってよ。」

楽観的といえば良いのか、何といえば良いのか……
呆れてしまって、何と言ったら良いのかわからない。
とにかく、これ以上話しても無駄だと思い、僕は話を打ち切った。



「……相談はもう良いの?」

「うん、もういいよ。」

僕にはそう言うしかなかった。



「じゃあ、私は疲れたから早めに寝るよ。」

「うん、おやすみ。」

去り際に、なっちゃんは立ち止まり、僕の肩をぽんと叩いた。



「あんたは今のままで良いんだよ。
周りがどう思おうと、私とこたはそう思ってる。
あんたにはとても助けられてるし、感謝してる。
そのことだけは忘れないで……」

「……ありがとう。」



なんだかんだいっても、やっぱりなっちゃんは優しい……
僕のことを考えてくれてるんだと、胸の奥がじーんと熱くなった。