「すみません。
なんだか不躾なことを言ってしまって……」

「い、いえ……
違うんです。
花のこと、そんな風に言ってもらったことがなかったので、びっくりして……」

「そう…だったんですか……」

そのままに受け取って良いものか、それとも迷惑だからそんな風に答えたのか、はたまた僕には思いもつかないようなことを彼女は思ったのか、僕にはまだ判断がつかなかった。



「私……特別になにかを習ったことはなくて、お店で教えてもらっただけなんですけど……
もしも、それでも良かったら……」

「え…教えて下さるんですか?」

「は、はい。
教えるなんて、そんなたいそうなことではありませんが……」

僕は考えすぎていたようだ。
彼女は言葉通り本当に驚いただけだったんだとわかって、僕はほっとした。



「あ、ありがとうございます!
嬉しいです!
あ、僕はいつでも大丈夫なんで、篠宮さんのご都合の良い時間で構いませんから……」

「では、水曜日ではいかがでしょう?
水曜はお店がお休みなので……」

「僕は構いませんが、お家の方は大丈夫ですか?」

「え……?
あ……はい。
家事は……は、母が全部やってくれますから。
家にいたら、却って邪魔にされるくらいで……」

なにか、おかしな気がした。
篠宮さんの視線は落ち着かないし、休みの日に家にいるだけでお母さんに邪魔にされるっていうのは、ただ大げさに言ってるだけなのか、それとも仲が悪いのか……

どこの家にも少しくらいの問題はある。
余計な詮索は無用だ。



「そうなんですか?
でしたら、水曜日によろしくお願いします。
もし、ご都合が悪かったら、また仰ってくださいね。」

僕は素っ気なくそう言った。