■ショコラ3

『…何で…?』
『…ユマが好きだから。』

私の質問に返ってきたのは去年のナオの言葉。

『俺、今年もチョコ待ってる…』

そして同じ約束。

今年は裏切らない?
それともまた裏切るの?

『私… ナオにはチョコ渡す気ないから…ッ…』
『ユマ…』
『ナオは去年、私に嘘ついたじゃない! 待ってなかったじゃない!!』

ごめん…
やっぱりナオを信じるのは怖い。

去年のあの日…
「私もずっと好きだった」って言いたかったの。

でもあんな姿を見たら何も言えなくて…
前に進めなくて…

ナオを嫌いになりたかった。

でも嫌いになれない。
もう辛い想いは嫌だよ…

『…わかった。』

ナオは私の頭をポンっと軽く押すとカーテンの中から出ていった。

昼休みにはいつものナオに戻って皆と笑ってた。



そして14日。
部活で学校に来た私はナオの下駄箱を確認する。

よかった。
今日はいない。

『おっはよ~ユマ!』

同じ部活のエリが私の肩を叩く。

『あ、おはよ。』
『ナオの下駄箱見たりしてどーしたの?』
『…』

本当… どーかしてる。
何で涙なんか出るんだろう。

『エリ… あのね?』

誰かに聞いてほしくてエリに全てを話した。

『…それさぁ… ユマの誤解じゃない?』
『え…?』
『だってナオってそんな軽い奴じゃないよ? ユマが1番知ってるでしょ?』
『…』

確かにナオはそんな人じゃない。

『私… ナオに酷い事言った…』
『うん… ちゃんと話しておいで?』

エリの優しさにまた涙が止まらなくなった。


腫れた目で家に帰り、ナオからもらったあの小さなレシピ本を開く。

ガトーショコラ…
私に作れるだろうか。

焦げたり崩れたり何度も繰り返し、成功作ができたのは11時を回ったところだった。

最終のバスが出てしまった今、走るしか術はないが…
どれだけ頑張っても45分はかかる。
きっとナオは寝てしまうだろう…

【日付が変わるまで待っとんのやで?】
【14日じゃなきゃ意味ねーよなぁ?】

ううん…
ナオならきっと…