彼の目の前。
ただ呆然と立ち尽くす私に対し、彼は溜め息まじりに口を開く。

『別にそんな痛くないけどさぁ。 道路に石投げたら車パンクするべ』

あの歌う声と同じ音。
あの彼と同じ顔。

『あの……ずっと探してました』

『はい?』

あ、いかんいかん。
こんな突拍子のない事言っちゃ……

『私達きっと前世で会ってると思うんです!』

『はぁ…… へぇ』

彼は今にも笑い出しそうに口を押さえて堪えていた。
これは信じていないサインだ。

『笑わないで! 本当なんだから!』

『わかった、わかった! 最近、そう言う奴多いから慣れてるし』

な、慣れてる!?

『モ、モテるんだね』

『変な奴に好かれるんだわ。 アンタみたいに!』

『ひっどーい!』

『あはは! んじゃまたな』

彼はそう言った後で、意地悪っぽく「二度と会わないけど」と付け足した。


悔しー!!
名前くらい聞けばよかった!

名前、名前、名前……
アー……アズマ……?

何で私、彼の名前を……?