俺達は3年前と同じように席に座り懐かしい話を沢山した。

あの人はあの子が好きだったとか、あの先生は実はズラだったとか。

『じゃあね~、これは覚えてる?』

『何?』

『私のお葬式の日』

朔は急に真面目な顔をして、俺の目をジッと見た。

『……覚えてるよ』

あのテレビを見ていた日だ。

『凍也、来てくれないんだもん…… 私、嫌われたのかと心配しちゃった』

多少の覚悟はしていた。
朔はこれを言うために現れたんじゃないかって。

『…どうして来てくれなか…ッ

朔が台詞を言い終える前に、俺は自分の唇で朔の口を塞ぐ。

『凍……ッ』

逃げられないように両腕を強く掴み……

『頼むからそんな話しないでッ』

言わせたくなかった。
認めたくなかった。

『朔は今、ここにいるじゃん! だから……』

朔が死んだなんて、思いたくなかった。

もう一度強引にキスをして、
なだれ込むように朔を床に押し倒していた。

朔の白い肌を俺の手が探っていく……

『やっ……凍也!』

触りたいとか、抱きたいとか。
そんな欲にまみれた気持ちじゃなかった。

そんなことよりも朔が側にいることを実感したかった。

ちゃんと実体があるものだと思いたかった。

『私……初めてだから痛いかなぁ……?』

目に涙を浮かべて言う朔。

『朔……』

俺……
そんなつもりじゃ……

『でも、凍也ならいいよ? 凍也なら痛くしても……』

それだけ言うと、朔は力を抜いて目を閉じた……





『ねぇ凍也。 ここから桜並木が見える』

シャツのボタンをはめながら朔が言う。

『ホントだ』

窓の外を見ると、俺達がよく歩いたあの桜並木があった。

『ちょっと咲きだしてるね』

さっき見た時は咲いてなかった桜が、チラホラ咲き出している。
あと3日もすれば満開になるだろう。

朔を失って3度目の桜が……