『バーカ』

目が覚めると俺は、冷たい道路に倒れていた。
つか、誰か「馬鹿」って言ったか?

『さ…… 朔!?』

そこには朔によく似た女の子が……

『よっ! 久しぶり』

この声……
この笑顔……
朔、本人だ!!

『ついに俺も死んだか』

突然の事に上手く頭が回らない。

『あー、うん。 見事に車に跳ねられてたよね』

朔が笑う。

俺は感極まって、思いきり朔を羽交い締めにした。

温かい……
生きてるみたいだ。

『上ばっか見てるから車に轢かれるんだよ?』

『お、お前が言うなよ』

『あはは! 確かに私も余所見してて跳ねられたんだけどね!』

ケラケラと笑う朔はあの日のままだった。

『笑えねぇよ……』

ホント…… 笑えねぇ……
涙が止まんねぇし。

『朔…… 本当……大好きだ』

『うん…… 私も』

俺達は軽くキスをした後、笑い合った。

『俺達、キスしたの初めてだよな』

『だね! 付き合ったの16歳だったしね!』

そう言われ、朔を見ると朔の姿は16歳のまま。

俺だけ年をとってる。
それが妙に虚しかった。

『凍也は今年で20歳だっけ?』

『ん……』

『すごいカッコよくなったね』

よく考えてみると得した気分じゃね?
20歳の俺の彼女は女子高生……

少しでも前向きに考えなきゃ。

『ねぇ! こんなとこで話すより、どっか行こうよ!』

朔が俺の手を引っ張って走りだした。

行くって……
死んでるのに何処に!?

『ちょ、朔! どこ行くの!』

『学校! 懐かしいでしょ?』

えぇーーー!
不法進入じゃん!

と、心配してみたもののアッサリと校内に進入。
警備が手薄で逆に心配になるよ……

『覚えてる? 私達が初めて話した時』

『ああ。 俺が「男みたいな名前」ってからかったんだよな』

『そう! それが悔しくて! だから桜になりたかった』

『俺のせい?』

『そうだよ!』

会話をしながらたどり着いたのは、俺達が一年間いた教室。

いつも朔とふざけあってた席だった……