「ねぇ、彼どう?案外イケてるでしょ!」


「綾香?まさかそれは失礼極まりない男のこと?」


苛々していた私は、私より少し背の高い綾香を睨み付けるように見上げた。


「もう!愛奈は可愛いのにすぐに怒る。今はまだよくても、そんなに怒っているとおばさんになったら眉間はシワだらけだよ」


それは困る。よくも悪くも会社で秘書課に属する私は、ある程度身形に気をつけなければならない。あわせて外見的にも手抜きは許されない。


軽く溜め息を吐き出して、綾香に向き直るとニッコリとした顔で迎えられた。


「あれでも彼ね、愛奈のこと認めているのよ。私なんか初対面で順一の彼女として紹介されても、話し掛けてすらくれなかった」


「は?あれで?名乗った私に『ふーん』だけで挨拶しない男の何処をどう見て認められていると認識出来る?冷たい態度で最低なこと言われているのに?」


「まあ、そうくるよね、普通。でも、彼、基本初対面の女の子と話さないどころか目も合わせないのよ」