「オーナー!マネージャーって無愛想でもいいの?」


「え!コイツなんか失礼なことした?」


オーナー、森順一。見た目はワイルドだが実はとても優しくて涙もろい。綾香の友達ってだけでご馳走してもらったことの他に飼い猫が居なくなったと泣いたことも。


「だって、挨拶すらしてもらえない。此処、大丈夫?こんな常識ない人がマネージャーって順一さん心配ですよ」


まだ話をしている最中に、チッと舌打ちが聞こえて、綾香は隣で苦笑いをしている。


「愛奈ちゃん、コイツこう見えても仕事中はちゃんとマダムの相手してるから。若い女性より熟女が好きなだけ、――痛っ!」


柚木の手にしていた分厚いファイルが順一の頭を直撃した。


「お前、どういうつもりで順一の女についてきたのか知らないが、今は業務時間中で、挨拶やらパーティーやらで忙しい。知らない女の相手している暇はない。順一、先に行ってる」


片手で順一に合図を送ると背を向けて嫌味なほどの長い足で颯爽と去って行く。