周囲には、まだ大勢の警察官がいる。
その中心で抱き着いたうららを、小泉もしっかり受け止めた。
小泉の腕に抱きしめられ、うららの震えがやっと止まった。
しばらく無言で抱き合ってから、小泉が謝った。
「助けるのが遅れて、悪かった」
うららは何度も首を横に振る。
ナイフを突き付けられ、震えるほどに恐怖を感じたが、
それでも殺されるとは思わなかった。
小泉が絶対に助けに来ると、信じていたから堪えられた。
そんなうららの言葉を聞き、小泉が抱きしめる腕に力を込めた。
うららの耳に口を寄せ、低く艶のある声で何かを囁く。
うららはパッと、端正な顔を見上げた。
その頬は見る見る赤くなり、耳まで朱に染まる。
小泉が何を言ったのかは、うららにしか聞こえない。