身内をとられては、冷静さを欠いてしまう。
それがこの件に、小泉を関わらせたくない理由であった。
指揮官の小山内にそう言われては、何も出来ない。
小泉は焦る気持ちをぐっと堪え、後方から見守るしかなかった。
犯人の説得を続けるのは、ネゴシエイターと呼ばれる交渉のプロだ。
彼はまず犯人を落ち着かせるべく、一人ドア前から語りかける。
興奮状態であることが一番の危険であった。
衝動的に人質に危害を加えられることは、避けねばならない。
柔らかな語り口で話しかけること、1時間。
犯人の怒声が止んだ。
やっとまともに話せる、精神状態になったらしい。
そうなれば、次は交渉だ。
ネゴシエイターは、犯行の目的や要求を聞きだそうとする。